他社の事例に学べ!深堀り、成功EC事例インタビュー
≪通販コンサルタントが語る、通販に失敗する会社の典型とは?≫」
■通販事業を軌道に乗せることは非常に難しいことだと思いますが、通販コンサルタントとしてご活躍されている井野さんが見た、通販事業立ち上げにおける失敗から学んだ事例を教えていただけますか?
おっしゃるとおり、通販事業はチャンスが大きい反面、失敗する確率も非常に高い事業でもあると思います。それはなぜなのか?
■やはり通販事業を始めると決めたのなら、ある程度のコストは仕方がない、と?
もちろん、本当に必要最低限のものは必要ですが、お金をかけずにできることはたくさんあると考えています。自筆のお手紙を一通書いてみるとか、あるいは商品をお送りする際にメモ1枚入れてみる、とか。またはお電話に出たときにお客様と直接話してみるとか、それだけでもお客様がその商品を使っていただいているときにどう思われたのか、どういうモノを望んでいるのか、価格は適正だったのかとか届き方のタイミングは良かったのか、とかお客様からいろいろな情報を得ることが出来ます。
逆にそういったときこそ、お客様に自社の商品の良いところを伝えるチャンスでもあり、お金をかけずにできますよね。それを、お客様一人一人にやることの積み重ねが大事です。通販でも一人一人のお客様を大事にするということは実際の店舗と同じではないでしょうか。
こうした一人ひとりのお客様から得られるものが多い、ということは、得てして現場の方々は肌で感じているのに、トップの方々はそれを感じられないことが多いと思います。お客様ひとりひとりの積み重ねよりも、すぐに結果が欲しい、そのためには「お金を使って誰かに頼もう」とか「プロに任せればできるだろう」と思っているケースが多いように思います。もちろん場合によってはプロの力を活用することは非常に有効な手段ですが、「お金を投じれば、必ず大きく返ってくる」というのは明らかな間違いです。失敗してしまう企業の場合は、通販という手法を安易に捉えてしまっているケースが多いように感じます。
■なるほどですね。失敗から学べるケースが非常に多いですね。その他、井野さんが感じる、典型的な失敗例はございますか?
よくありがちですが、結果を短いサイクルで求めてしまうことですね。先ほどの例にもありましたが、例えば、すぐに結果を出したいがために広告を出し、それがイコール売上アップと考えてしまうこと。こうした考え方は危険ですね。
広告を出すということは新規のお客様を獲得することで、売上がイコールにはならない。ただ、お客様を取ったところで、それが成功か失敗かは、その時点では誰にも分からないんですね。100万円を使って1万人のお客様を取れたことが果たして成功かどうかは分からない。なぜかというと、例えば、健康食品や化粧品など、繰り返しご購入いただくことで利益を確保してゆく、いわゆる「単品リピート通販」といわれる通販の場合は、優良なお客様を何人獲得できたかということが、企業の成功の鍵と言えます。ということは、新しく掴んだお客様が優良顧客になることが事業としての肝ですよね。ということは、新規のお客様を取っただけだと成功か失敗かは分からないんですよ。しかし、そこで広告費を使わないと、いつまでたっても優良なお客様はつかめない。たしかに、そういうジレンマはありますが。
だから順序としては、まず広告を出す。その結果、新しいお客様が掴まえられる。そして、新しいお客様が優良顧客になる。その、優良な顧客が商品を買ってくれることで、売上が安定的に伸びる。だから、利益が出る。
こうして考えると、利益が出る段階にたどり着くまでには、企業によって差があり、場合によっては、非常に長期間にわたる道のりになります。その利益を生み出すまでの長い道のりを我慢できるのか、そこまでお客様と丁寧にお付き合いすることを事業として考えているのかどうかですよね。
■また、通販の広告では芸能人をイメージキャラクターとして起用されるケースもありますが、あれについてはどのようにお感じですか?
芸能人をイメージキャラクターとして起用することがいいか悪いかは別として、私が経験したケースでは、とある通販商材で有名タレントさんを起用しました。女性向け商品で、そのタレントさんの意見も取り入れながら開発を行なったんですが、ここも結果的にはうまくいかなかったのですが、このケースでは二つの大きな過ちがありました。
まず第一に、商品開発にもある程度お金をかけましたが、何よりタレントさんのギャラにお金をかけすぎてしまったこと。もちろん、有り余るほどのお金があればいいのかもしれませんが、ここの場合は、そのバランスが悪かったですね。
そして、二つ目が、全てタレントさん主導の広告になってしまったこと。ビジネスのやり方や広告の仕方、全てタレントさんを前面に登場させるような広告づくりになっていったんです。タレントさんが広告に出てくれないと、商品やブランドの価値を作れないという考えがそもそもの間違いです。
分かりやすく言うと、タレントさんの魅力を前面に押し出すことに気を取られ、広告制作において本来の目的である「商品の魅力を最大限に伝えたい」ということを忘れ、「商品はどこにあるの?」といった広告が出来上がってしまうといった状態でした(笑)。
本来であれば商品の良さを伝えるためにタレントさんに出ていただくところが、タレントさんの良さを出すための広告になってしまった、という失敗例です。
■今度は、「この会社は素晴らしい」という成功事例はございますか?
これも、通信販売事業会社の事例ですが、まず、その会社は売上至上主義になりがちなところを常に注意していました。ひとつひとつの広告での売上高に一喜一憂するのではなく、本当のファンを集め、長くご愛用いただくためのコミュニケーションを目指していました。だから稼動している顧客も2万人程度で、広告も一定量以外はむやみに出さない。
通常、通販で急成長する会社は、倍々ゲームで広告を出すものです。CPOがある程度見えていれば、広告に倍の予算をかければ、倍の顧客が集まる。そして、売り上げも倍にという理屈です。もちろん限界はありますが、売上高を上げるには、たくさん広告を出し、数字も簡単に上がる。しかし、その会社はそれをしないんですね。
その理由の一つは、業務の全てを自社の社員でやっていること。例えば、コールセンターのオペレーターや在庫管理や商品の受発注作業も社員が行う。唯一、商品の梱包はアルバイトに任せている。
つまり、単純に売り上げを倍にすると、業務が増えすぎ、アウトソースしないといけない事業の範囲が広がってしまう。そうなると優良顧客に対し、自社の商品の良さを伝えるコミュニケーションが崩れていくという考え方を持っているんですね。だから、一定規模以上は広げない。その結果、堅実に生き残っていけるんです。
■いろいろな事例をお伺いしましたが、通販事業を立ち上げるにあたり、気をつけたほうがよいポイントを教えていただけますか?
通販コンサルタントの私が言うのも変ですが、むやみに人に任せないこと。通販をやる上で、様々な場面で外注という選択肢が出てくると思いますが、特に外注の顕著な例が、コールセンターです。「コールセンターのプロだから電話の受け皿はそこでいいだろう」と思ってしまうと、商品の良さはお客様には伝わらない。
だから自分たちで、少しでも理解したうえで、「ここの部分は外に頼もう」という判断をしてほしい。私は全ての通販の立ち上げのときに言うんですが、コールセンターを外注する場合でも、「そのうちの一本でいいから、社内でも電話を受けられるようにしてください」と。あるいは、「時間の制限を設けてもいいから、お客様相談室のような、お客様の声が直接聞ける窓口を、会社に一本は設けてください」とお伝えしております。
例えば、事業の立ち上げから日の浅い会社であれば、お客様がかけてきた電話を経営者の方自らが一度はとってみる、ということをしてみるべきだと思います。もちろん、きちんと教育されたプロのオペレーターに比べ、言葉遣いは、多少乱暴かもしれませんし、場合によっては方言もあって聞き取りにくいかもしれません。でも経営者の方が自らの言葉で、商品の良さをしっかりと、誠意を持って伝えることが大事だと思うんですよね。正しい敬語で、正しい受け答えばかりをお客様は望んでいるわけではないと思います。
最近では、スーパーなどで売っている産地直送の野菜に、生産者の方の携帯の番号が入っていたりするじゃないですか?あれは、非常にいいですよね。「商品の情報についてはフリーダイヤルにお電話ください」って書いてあるよりは、こっちからかけてお金はかかるが、そのほうが信頼性は高い。
だから、なんでもかんでも、フリーダイヤルを作り、そこで受けるよりは、「何のために外注するんだ」ということをきちんと理解し、その上で必要なものだったら、外に頼めばよいと思います。
■では、最後にこれから通販を立ち上げたい方、また、始めたばかりの方たちに対するメッセージをお願いいたします。
通販はチャンスが大きい事業だと思いますが、逆にそのチャンスの大きさから、安易に参入してくる人も多いです。しかし、チャンスを掴むには強い"想い"を持たないと、絶対にうまくは行きません。片手間に、ちょっとお金あるからとか、面白そうだから、といった安易な気持ちでは、絶対に失敗してしまうと思います。
よく私が言うのが、「想いに掛け算をしないと事業としては伸びていかない」ということ。想いがないと掛け算しても、ゼロはゼロなので、絶対に伸びない。また、想いが強ければ、他人から見ればつまらない、些細なことにまで「こだわり」が出てきます。通信販売では「こだわりをいくつ形にできるか、がとても重要なファクターになることがあります。
想いを強烈に持つことで、お客様に理解してもらおうとがんばるし、それが優良顧客の獲得にも結びつく。もちろん宗教ではないので、お客様は想いだけでお金を払ってくれるわけではありませんが、想いが伝わるとその想いの分だけ、商品には付加価値が加わってお客様に商品価値が伝わるようになり、それが結果として売上という数字にまで表れるようになるんです。
また、想いがあっても伝えようとする努力をすることも必要です。良い商品を作っているんだから、誰かが見てくれるだろうという姿勢では伝わりません。よく「あれよ、あれよという間に売れました」とか「口コミだけで、こんなに!」といった話も聞きますが、個人的には疑問ですね。伝えることを誰かがしないと伝わらないじゃないですか? スタートとしては、事業に対する熱い想いと、それを伝えようとする努力。まずはそこからでしょう。
■お忙しいなか、ありがとうございました。
井野 友章氏プロフィール ~通販専門家・コンサルドットコム~
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「株式会社ハートビート」URL
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